術後の嚥下機能(飲み込み機能)の低下から、耳鼻咽喉科を受診
手術から5日目、耳鼻咽喉科で診察を受ける。
脳外科の手術入院で耳鼻咽喉科に行くことになるとは思いもよらなかった。それぐらいオットの術後の嚥下機能(飲み込み機能)の低下は顕著だった。
低下、ではなく、停止だし。
手術前の説明では、術後1日目から「全粥」が出ると聞いていた。
「食べられるのだ」と思い込んでいた。
だから、何日も食事はおろか水の一滴も、自分の唾液すら飲み込めなくなるなんて想像できず。
そして、一滴の水さえ飲めないことが、これほどまでに辛いことだとは…。
実際に飲めない辛さを体験したのはオットだけど、そばにいて飲ませてあげたいのに出来ない辛さもハンパなかった。
せめて飲むことの代わりになればと、口の中を湿らすつもりで濡らした歯ブラシを口に入れた途端、そのちょっとした水滴が喉の奥にいったのか、激しくむせ返ってグッタリ。
やめときゃよかった…。
主治医によれば、
・今回の手術の術後の症状として嚥下機能の低下はよくあるケース
・回復は2週間程度を要することが多い
だけどオットの場合は、顔面けいれんを起こしていた神経の絡まりが複雑だったため回復にもう少し時間がかかるかもしれない、とのこと。
なので、その「もう少し時間がかかるかも」の「どれくらい」感を、耳鼻咽喉科の専門医に診ていただくことに。
入院病棟からエレベーターで耳鼻咽喉科外来へ。オットが乗る車椅子を押して歩く。
術後「ふらつき」も酷く、立ち上がることも出来なかったオット。喉の動きもままならなかったけど、術後の症状はそれだけではなかった。
車椅子に乗ったオットの背中に、5年前に亡くなった父の車椅子姿を重ねた。こみ上げるものがあった。
窓口で名乗るとすぐ診察室に。
そこには、耳鼻咽喉科の女医と、リハビリ担当のおなじく女医が待っていた。
喉の動きを、発声の状態と、鼻から内視鏡を喉に通した映像で確認するとのこと。
わたしも同席させてもらえたので、映し出されるオットの喉の様子をモニターで一緒に見ることが出来た。
声を出すように言われた時のオットの気道の動きは、わたしの目にも左右非対称で、あきらかに右側が動いていないのがわかった。
気道が閉じるべき時に閉じないと、声にならないらしい。
術後、かすれるような、声にならないような声しか出ていなかったのは、このせいだったのだ。
そして、今度は「ちょっとこれを飲んでみてください」と、オットにちいさなスプーンが渡される。
スプーンの先には緑色のゼリーのようなものが乗っていて、飲み込もうとするときの反応を見るという。
試しに、口に運ぶと、例によってむせ返り、オットは鼻や涙を流すばかり。
喉の動きを観察した先生方は、「喉に軽い麻痺が出ていることによる嚥下機能障害が認められる、数週間はかかるだろう」と言った。
数週間?
手術から今日まで、たった5日間だったかもしれない。
でも、オットやわたしにとっては何も口に出来ない、唾液すらコップに吐き出さなければならない5日間は本当に長く苦しかった。
それなのに、まだ数週間もこんな状態が続くの?
でも数週間したら「回復」するんですよね?
この時、先生方は数週間後「改善する」とも「完治する」とも「少しはよくなる」とも言って下さらなかった。
わたしは少しでも希望の言葉が聞きたくてたまらなくて、もうちょっとハッキリした答えが欲しいと食い下がると、黙っていたオットがかすれた声で言った。
「様子を見なきゃわからないんだよ」
初回の耳鼻咽喉科の診察では、期待するような見通しを聞くことは叶わなかった。
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