ワレンベルグ症候群、リハビリテーション総合実施計画書(1回目)

(※2014年の振り返りです)

「リハビリテーション総合実施計画書」が届けられたのは、12月25日のクリスマス。

顔面けいれんの手術から8日目、術後の合併症で脳梗塞を発症したと思われる22日から4日目のこと。

後遺症のうち、リハビリの対象となったのは「歩行障害」と「嚥下障害」のみ。
歩行障害は男性のPT(理学療法士)さん、嚥下障害は女性のST(言語聴覚士)さんが担当してくれた。

リハビリメニューを作成するにあたり、オットの後遺症レベルを確認する。

まず、歩行レベル。

ベッドで体を起こすまでは自力で出来るものの、ベッドから降り一人で歩くことは出来ず。
PTさんに支えられながら病室の廊下に出る。

片方の手で廊下の手すりを持ち、もう一方はPTさんに支えてもらいながらヨロヨロと歩く。

1週間くらいベッドから起き上がれなかったのと、「めまい」でうまく足に力が入らない。

ゆっくり、ゆっくり、行ってみましょう。と、サポートしてくれるPTさん。

足のどのあたりに力が入らないのか
身体がどちらに傾きそうになるか
足の付け根はどうか
足裏の感触はどうか

ヒアリングしながらオットの状況を確認する。

オットは平らで障害物のない廊下ですら、普通に歩けない。

股関節に力が入らず、まっすぐ立っていても左側に傾いてしまうようだった。
この状況から、ベッドから降りるときは見守りかサポート、歩行は歩行器がマストとなった。

 

次いで、温痛覚麻痺のレベルチェック。

ベッドに戻り、右半身の皮膚の感覚をくまなくチェック。

家庭科の授業で見たことのある「ルレット」のような道具と、ケーキの持ち帰り時についてくる「保冷剤」で反応を見る。

「痛み」のチェックは、「ルレット」。
ちょっと鋭利なトゲトゲがある小さな回転盤を皮膚の上で転がす。

「温度」の感覚チェックは、凍った「保冷剤」。
直接皮膚にあてる。

「温痛覚麻痺」のレベル確認は、こんな小さな道具を使っての、実に地道でアナログな作業。

オットの反応はこうだった。

右半身のほとんどの部分で、「ルレット」を動かされても痛みを感じず、凍った「保冷剤」にも鳥肌ひとつ立てることもない。

ところが、時々、ほんとうに時々「ん??」という反応を見せる。

オットのように「右半身麻痺」でも右側全体に麻痺があるわけでなく、右側の中でも麻痺のレベルにバラツキがある。右半身均等に麻痺するのではないよう。

たとえばオットの右足の「すね」。
やはり全体的に痛みや温度が分からないけど、ひざ下10センチ×幅5センチ程度の限られた範囲は「かすかに」痛みや冷たさを感じるという。

顔の一部もそうだった。ほおの上あたりの、小さな範囲だけは感じ方が違うという。

 

歩行と皮膚の感覚チェックが終わり、嚥下機能の「ノド」の状態をチェック。

食べる機能は「唾液」すら飲み込めなかったので、「嚥下」は確認せず「声」をチェック。

半身麻痺とはよく言ったもので、身体の真ん中に存在するものはその半分だけが影響を受ける。

声帯。左側は「開ける閉じる」が正常に働くのに、右側は「ほぼ動かないか動こうとしてもイビツな形状」になる。
そのせいで「嗄声(させい)」に。

カッスカスの声で、口元まで耳を近づけないと聞き取れないほどの音量。

面と向かって話せば何とか聞き取れるけど、電話だと何を言っているのか相手に伝わらない。
そんなわけでしばらくの間、オットの会社への連絡は、わたしから電話をさせてもらっていた。

 

チェック後の12月25日現在の「リハビリテーション総合実施計画書」に書かれたオットの障害レベルは

・感覚障害:右上下肢・手指 感覚・温冷覚=0/10(下肢前面のみ1/10)
・摂食障害:食道入口部開大不全、誤嚥
・音声、発話障害:嗄声(気息性、粗ぞう性、湿性)

 

感覚障害は0/10。
つまり、まったく「感覚が、ない」。かなり厳しい。

「すね」の、「ちょっとわかる!」とオットが喜んだことも、レベルにすると、1/10か…。

 

10のうちの1。わずか、過ぎるな。

 

でも、「0」と「1」は大違いな気がした。
「0」ってガッカリするけど「1」には希望を感じるから。

もともとの顔面けいれん手術のスケジュールでは、退院許可が下りるはずだったクリスマス。
自宅に帰る予定だったのに。

この計画書に従い、翌日からオットのリハビリは始まるのでした。

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