点滴だけでは栄養が不十分、鼻からチューブで流動食を流し込む

術後、水も食べ物も口から摂取できないため、腕からの点滴で栄養補給をしていたけれど、1週間も経過するとさすがにカロリーや栄養に不足が。

たしかに、オットは入院当初よりいくぶん痩せていた。

耳鼻咽喉科の診断ですぐには嚥下機能回復が見込めそうもないとなって、次なる手段で検討されたのが「経鼻経管栄養」。

鼻からチューブを直接胃まで差し込んで、流動食を流し込むという。

そうすることで点滴より多くの栄養やカロリーを送り込めるし、胃や腸を正常に働かせることができる。必要栄養やカロリーの摂取だけでなく、臓器を動かすことも大事なのだと主治医から説明があった。

 

鼻からチューブを差し込む?

聞いただけでゾッとする。痛そう…。

 

その日のうちにトレーニングと称して、耳鼻咽喉科の医師やリハビリ担当の医師、オット担当の看護士のほか病棟の看護士数名がゾロゾロとやってきた。

オットの病室は大部屋だったから、すぐ隣にも向かいのベッドにも患者が入院している。
ここでやるの?と言う私に「あいている個室でやりましょうか」と場所を移してもらう。

個室に移るとリハビリ担当の女性医師から、これからどんなトレーニングをするのかの手順と、なにゆえ大人数で集まったかの説明があった。

 

鼻からチューブを差し込むのは、看護士のサポートでしてもいいし、自分のペースで挿入したいなら自分でやってもよい。

チューブが間違いなく気道ではなく食道に通っているのを、挿入時の「音」で看護士が聴診器で確認する。確認作業が出来るよう未経験の看護士も参加している。

 

カートに準備された大きな紙コップと、タピオカジュースを飲むときのストローみたいな太さのチューブを横目に見ながら、わたしは淡々と話す女医の言葉を聞いていた。

これからオットの身に起こることをいちいちイメージして、トレーニングが始まる前から私の眼には涙がうっすらとこみ上げていた。可哀想すぎる…。

 

それでもオットは努めて冷静に状況を受け入れ、「やってみます」とたじろがない。

 

ベッドの上で体を起こした体勢のオットにチューブが手渡され、医師のサポートを受けながらまずは自分で挿入してみる。

さすがにオットの表情がゆがむ。

それでも、なんとかチャレンジしようと試みるも少し進んではむせ返り、なんとか喉を通ったかに見えた時も苦しすぎてオットの目から自然に涙が流れる。

そんな中、オットの「音」を確認しようと数人の看護士が集まるが、「え?わからない…」とこっちが不安になるリアクション。

 

ちょっとーーーー、大丈夫なのっ!
こっちは決死の覚悟で、こんなに辛い思いをしているというのに間違いがあったらどうしてくれるのよーーーっ!

センセー、こんな選択しかないんですか!辛すぎるし、怖すぎる!

 

心の声が本当に口をついて出そうになった時、リハビリ担当の医師が

「無理そうですね、この方法はまたにしましょうか」

と、オットを解放してくれた。

 

病室に戻ったオットの背中を何度も何度もさすった。

いっそ、胃瘻(いろう)を受け入れるしかないのか。
いずれにしても社会復帰はできないのではないか。

嚥下機能が回復しないと、こんなつらい現実が待っているのだと、そう思ったら涙が出て止まらなかった。

 

経鼻経管のチャレンジ結果を受け、主治医が当面の栄養補給を「腕」の血管から「太もも」の血管にすると話に来てくれた。
必要カロリーや栄養が十分に摂取できるわけではないけど、嚥下機能回復の期待もあるからしばらくは太ももからで様子を見ましょうとのことだった。

翌日、右太ももの付け根あたりに装着された差し込み口は、嚥下機能が回復するまでの約1週間、オットに生きるためのエネルギーと栄養を送り込んでくれる大切な補給口として活躍してくれた。

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